チーム・バチスタの栄光

バチスタというのは心臓の手術のひとつなのだが、一度心停止させた後に、病気の部分を切除し、再び心臓を再鼓動させるという直接的な手術。当然のように成功率は高くはない、難しい手術。世の中にあまり知られることのない手術室という閉ざされた空間、大学病院というある意味浮世離れした社会という密室を舞台にしたミステリ。

昨今、医療現場を舞台にしたマンガやドラマが流行っているが、医療チームという呼び方への、患者と医者との温度差みたいなものが嫌いで、あまり関わりたくないと思っていたのだが、この小説は、小説としてはかなり面白い。ミステリ小説では最も中心となる犯行の手口はもちろん、探偵、助手のキャラクタもきちんと立っていて、飽きることなく一気に読ませる。私がもっとも気に入ったのは高階教授。象牙の塔の切れ者、大学病院の辣腕政治家という陰険キャラだが、ラストにみせる人間らしさ、懐の深さがいい。

著者がお医者ということで、一発屋なのでは?とも思ったが、シリーズ続編もあるようだし、それ以外の作品にも期待。

ずいぶん褒めたが、自分でも犯人探しをやってみたくなるという人にはあまり評価されないかも。読者には知りえない情報がずいぶんある。また、なぜ探偵が犯人を特定できたかは、読み終えてみてもいまいちわからない。