文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)

銃・病原菌・鉄〈,〉では、文明がおきるほうの話だったのに対し、こちらは滅ぶほうに焦点を当てた著作。銃・病原菌・鉄と同様、比較分析により、文明の存続と滅亡を沸けた要因を5つ挙げている。

上巻では、これら5つの要因のうち、ひとつの要因によってのみ滅んだイースター島の文明に始まり、5つの要因すべてが影響して滅んだグリーンランド人たちを含む、文明の勃興から滅亡までを描き出す。イースター島は今ではぺんぺん草も生えないような状態らしいのだが、もともとそうだったのではなく、住人たちの環境破壊が原因。環境破壊がこうまで徹底するものかと驚愕した。また、グリーンランド人たちは、滅亡と比べればとるに足らない理由のために滅んだ。後知恵ではそういえるのだが、当事者たちにはそれ以外の選択はありえなかったのであり、いかに人々は硬直化した習慣から逃れられないものかと思い知らされる。

7~15世紀までくらいに滅んだ文明のことを扱っており、考古学が持つイメージから比べれば比較的新しい。が紛れもなくこれも考古学なのだろう。この年代くらいだと、遺物からかなり生々しく人々の生活を推し量ることができるようである。

ちなみに、銃・病原菌・鉄でも思ったことだが、本の構成がよくない。地図が引用箇所の近くに配置されていない(下巻を見ると、上巻の○○ページの図を参照、という間を跨った引用まであるのはひどい)。文章でだらだら説明するのもわかりにくく、表や年表などを用いれば、簡潔に説明できるはずである。内容は面白いのに、この点で読者を飽きさせていると思う。