現代工学のための数ベクトルの空間からヒルベルト空間へ

現代工学のための数ベクトルの空間からヒルベルト空間へ
篠崎 寿夫 吉田 正広 高橋 宣明 富山 薫順 松浦 武信
現代工学社 (1994/07)
売り上げランキング: 321,172

修士課程のとき、勉強してもしても、なんだかわからなかった関数解析学。バナッハ空間とかヒルベルト空間とか、なんでそんなもの考えなきゃいけなかったのかがわからないから、ノルムがどうとか内積がどうとか言われても右から左。

わけあって、10ウン年ぶりにチャレンジ。amazon.comなどの本の評判を知る手段ができたおかげで、いい本を見つけられたと思う。新しい概念を学ぶためには、繰り返し、といってもただ繰り返すだけではなく、少しずつ既知の概念を一般化しながらスパイラルに理解を進めていくのがいい。この本はそんな感じで、2次元や3次元のベクトル空間を3段階くらいで一般化しながら、続編の「現代工学のためのヒルベルト空間上の線形作用素入門」で扱うヒルベルト空間とはなにか、なぜそんなものを扱うと役に立つのかという点に絞って明らかにしていく。

欲張らずに、ヒルベルト空間論のおいしいところである作用素については潔く譲り、バナッハ空間はばっさり切るのも、初学者が混乱しなくていいと思う。もちろん数学的な厳密性にかける点はあるだろうが、それよりも、理論を作り上げる動機を伝えることにある程度成功している点にこの本の価値があるだろう。