名刀 その由来と伝説

名刀 その由来と伝説
名刀 その由来と伝説
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牧 秀彦
光文社 (2005/04/15)
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お城の見学が好きで、特に城址ではなく天守閣に登るのが好きです。日本のあちこちの天守閣に上がったことがあります。そういう天守閣には、まず例外なく大名が使った品々などが展示されていて、当然刀や武具もそのうちです。日本建築は木造のものなので、天守閣自体は戦火で焼けるなどしており、後世に建て直したものになっています。したがって、天守閣が好きだといっても、興味の一部は刀剣類などに向いていることになります。

とはいえ、刀の名前や作成者などを読んでも、聞いたことあるとか、面白い名前だとか、そういう感想しかもてないことを、長年物足りなく思っていました。そういう人にうってつけの一冊かもしれません。著者が冒頭で書いているように、たとえば私のような、刀剣は素人なんだけど、なんとなく関心があるという層は、刀剣自体の価値には当然疎いので、それを誰が所有したか、所有者はどんな人だったとか、人手に渡ったときはどうだったとか、そういったエピソードに対する興味というのも少なからずあるわけです。専門書には、刀剣自体の特徴や評価などが書かれているでしょうから、こういったことは専門書ではわからないわけです。この本はまさにそういう読者の興味をターゲットに、日本を代表する刀を取り上げ、それらにまつわる逸話や所有者が生きた時代のことが書かれている本です。

入門の入門なので、どれも国宝級の刀の話です。常設展示されていないものも多そうなのですが、また天守閣に行くことがあったらこの本も持って行きたい。巻末には、太刀、刀、脇差、短刀の分類や、刀の部分の名称などの説明があり、これだけでも刀を見学するときに楽しみ方が広がります。太刀、刀、脇差、短刀に、きちんと分類があり、しかも現在の法律上の区分とも一致するというのははじめて知りました。著者の個人的な刀の好みが一文だけ述べられているところも愛嬌があってよいし、人殺しの道具であり、試し切りという現在の価値観では残酷な現実を背負っているものだということを正面から受け止めるべきだという意見は、専門家の姿勢として好ましいし、本当の愛好家魂を見ました。