人を見抜く技術──20年間無敗、伝説の雀鬼の「人間観察力」

人生や仕事に悩む、あるいは悩んでいるからこういう本を読みたくなるが、その中でこの本を選んだ理由や、この本から掴みたいことというのが、著者が一般的な社会人とはかなり違った人生を過ごし、場合に寄ったら修羅場を多数を切り抜けてきたのだろうと思っているからに違いない。

この本の内容自体は、全体を通してみれば、病んだ社会のいろいろな側面(無差別殺人、モンスターペアレント、キレる若者・サラリーマン)を含んでいて、いまいち尖った部分がないともいえる。そういう中で、自分にとって一番刺さった内容は、「癖」ということ。自分にも、他人にもある癖を手がかりに、相手を観察し、対処するということ。癖に注目することで、いろいろなことが変えられるという点だったと思う。

自分のマイナス面を性格だといってしまえばそれまでだが、癖だと考えることで注目し、すこしずつ変えていけるかもしれないこと。他人の思考を直接読めなくても、癖に現れる部分が多いので、そこから推し量ること。そういう観察をすることで、しがらみから距離をおいたり、人を育てたりということがやれる。こういう観察眼は、おそらく思考能力ではなくて身体能力だから、著者は「目力」、「全体眼」、「柔らかさ」という点を強調しているのだろうと思う(第二章)。

これらの身体能力がないと、他人や危険に向き合うことがそもそも無理なんだろうと思う。ただ、この身体能力は、人間に対しては有効だが、狂人に対しては無効である。狂人に対してできることは、それを狂人と認識するところまでのようである。