離散数学「数え上げ理論」 (ブルーバックス)

離散数学「数え上げ理論」 (ブルーバックス)
野崎 昭弘
講談社
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とても面白い。

一般向け自然科学書籍なるカテゴリに属するものには、「数式は使ってない=わかりやすい」という誤った認識を読者に与え、それによって読者を増やそうとしているものがある。この本はそうではなく、すべての場合を列挙するという素人にも理解可能なアプローチを一旦押さえた上で、数式を必要十分に使うことで、数式あるいや理論の威力を読者に伝えることに成功していると思う。しかも、理論のほうが高尚だとか、そういう押し付けはなく、エレガントな方法よりも、「エレファントな方法」のほうが、柔軟に応用が利くようなケースも示している。

そういう点で、自然科学の一般的読み物として、簡単なようで難しいハードルをクリアした、成功例だと思う。

場合を列挙する方法として、闇雲にもれなく数え上げる方法を考えるだけでなく、

1)小さい問題を考えて、あとで一般的に拡張する、

2)数え上げやすいものと1対1に対応づける、あるいはよく似たことだが、

3)「逆対応の術」を使う、

など、忘れないようにしないと。

また、フィボナッチ数、分かち書きと構文解釈の難しさの比較、賭博の必勝法など、興味深い問題を、興味がわくように解説している。フィボナッチ数の漸化式と「閉じた公式」の話では、整数を扱う問題でありながら、無理数が閉じた公式に表れるなど、意外な感じ。

差分方程式、母関数のあたりは、面白い例が1つずつあるだけなので、いまひとつ応用できるまでには理解ができなかったので、もう少し専門的な本を選んで学んでみたいと思った。