幽談 (幽BOOKS)

短編集。タネも仕掛けも、オチもはっきりとしない不思議な文章だが、これもまた京極風。世の中、便利になって、わからないもの、あやしいもの、こわいものなど、次第になくなっていくかに見える。我々の世代が子供の頃は、まだそういうものが少しは残っていた。祖母の家のアノ壁のアノ部分がなぜか怖いとか、仲のよい友人は常に抹香くさいにおいを漂わせていたとか、そういったどうでもよいこと。ややもすると、そういう昔の記憶は思い出すこともないが、子供たちの世代に、果たしてこういうものがリアルタイムに存在しているのかどうか、とてもあやしい。