統計数字を疑う なぜ実感とズレるのか?

統計数字を疑う なぜ実感とズレるのか?
門倉 貴史
光文社
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「統計数字」という言葉で何を想像するかによるのだが、私に言わせれば、この本は統計の本じゃなくて、経済の本。かろうじて統計らしい話は、せいぜい第一章までで、平均値、中央値、中間値の使い分け、算術平均、幾何平均、調和平均の違いなどにとどまる。この調子で一冊本を書くと面白いと思うのだが、それ以降は市場経済を表すさまざまな指標の見かたや、気をつけるべきポイントなど、無色の統計学ではなく、経済という色のついた統計数字を扱う本。そう、本のタイトルから、「経済」というキーワードが抜けているのがよろしくないのだ。

もし、タイトルに「経済」というキーワードが含まれていたら、この本はよい本かもしれない。説明は確かにわかりやすい。また、著者の古巣のシンクタンクに対して批判をこめているところなどもよろしい。甘く採点すれば、取り上げた各経済指標は一例で、さまざまな経済指標は、その算出の前提となるモデルや、サンプルにおけるバイアスなどを注意深く吟味する必要があるということを指摘している、といえなくもないが。

著者は結構露出があって、有名人であるが、高校や予備校の先生的な教え方のうまさは確かに認めるが、統計の専門家、というのはちょっとなあ(辛口)。