本を読む本 (講談社学術文庫)

本を読む本 (講談社学術文庫)
モーティマー・J. アドラー C.V. ドーレン
講談社
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読書というと消極的なイメージがあるが、そうではなく積極的に著作とコミュニケーションをとって良書を十分に役立てるための読書について論じたもの。1940年に原著は書かれたらしい。確かに古いかもしれないが、当時であってさえ、多数の本から目的に合ったものを選び出し、自分の問題意識を深めるために役立てる方法が必要だと考えられていたことがわかる。現代であれば、そのようなニーズはさらに重要さを増しているだろう。インターネット上に玉石混合な情報があふれている中で、情報を消費するにとどまらず、自分の知識として身につけるためには、この本に書かれたことは少なからず有用だと思われる。

読書を次のレベルに分類している。

初級読書、点検読書、分析読書、シントピカル読書

このうち、大人に関係あるのは点検読書以上。分析読書は十分やれているような気がするので、点検読書とシントピカル読書の箇所が参考になった。特に、シントピカル読書は、研究のやり方がわからない、という人にはヒントにもなる。読むことに気が行っているうちは、自分の問題意識のために本や論文を役立てることがうまく出来ない。どうやればそれが可能なのか、手がかりになると思う。

訳者あとがきの、「日本人の読書」はとてもうなづける。少なからず日本人的読書の悪弊の影響を自分も受けている面がある。呪縛されずに、点検読書とシントピカル読書に重点をおいて、時間を有効に使って、知識を最大限に伸ばしたい。

この本自体は、やはり、段階を追って順に、という構成が古臭いのが気になる。今どきだったら、先にシントピカル読書について紹介ぐらいはやっておく。でないと、読者が飽きてしまう。分析読書の説明もくどい。論文やある程度まとまった報告書をきちんと書いたことがあるなら、もうすこし簡潔な説明で十分だろう。この辺も読者を意識していないから、こうなってしまう。

付け加えておくと、今どきの構成がよいといいたいわけでもない。本として世の中に残るからには、どの時代の人にとっても役立つよう、過不足なく説明するのはいいことだと思う。むしろ自分が今どきの構成に慣らされているのに気がつかされた、ということかもしれない。この「本を読む本」も、点検読書をしてから、自分の問題意識に関係するなら、他の関連図書とあわせて、分析読書を経て、シントピカル読書によって活用されることを、著者も望んでいることだろう。