「関係の空気」 「場の空気」 (講談社現代新書)
日本語の特徴、とりわけ省略や会話スタイルといったコミュニケーション上の機能を詳細に研究し、この視点から近年問題となっているいじめ、自殺、キレる人々が生じる問題(関係の空気に関わる)や、それよりさらに深刻な政治や企業内における非論理的な意思決定がなされる問題(場の空気に関わる)の原因を鋭く指摘する。
部下よりも上司が、男性よりも女性が、様々な話法を編み出し、コミュニケーションの上で優位に立っているという点はなるほど、と思う。会話においてもっとうまく切り返すことが出来ていたら、と後になって思うことがある。しかし、そうできるよう努力したとしても、そもそも、そのための話法が日本語には(少なくとも現在)用意されていないのだから、難しいわけである。
また、個人レベルならばともかく、政治において野党や報道が、与党に振り回されるようでは、全体の不利益になる。これらの人々は、コミュニケーションの専門家でなければならないのに、それが出来ていない。少なくとも公共の利益に反するし、政治家たちに対してはほとんど犯罪だといわねばならない。罪状は税金泥棒。
多様な社会問題の根源に、日本語に起因する「空気」を作り出す機能を原因に求める視点も面白いし、論理に矛盾や飛躍がなく、だれでも論旨には納得できるだろう。一読すれば、よりコミュニケーションと言語に意識し、「正しい日本語」を目指したいと思うだろう。
以下、自分向けメモ
関連図書
なお本書は、最後の下流社会とは主張が対称的らしい。「下流…」は未読だが、私としては、本書の説に納得する。「下流…」のほうはなんだか浅そう。
2ちゃんねるの「頭のおかしな人の判断基準」。よい引用先が見当たらないので検索で。
提案1.ちゃんと語ることで日本語は伝わる
提案2.失われた対等性を取り戻すために
提案3.教育現場では「です、ます」のコミュニケーションを教えよ
提案4.ビジネス社会の日本語は見直すべきだ。
提案5.「美しい日本語」探しはやめよう
「です、ます」調をめぐって。外国人が話す「です、ます」調のきれいな日本語には、裏(?)があった。文法的に活用のバリエーションが少なく、非母国語として日本語を覚える近道だから。