ダーウィンの悪夢

11月末に、多摩映画祭で見た。アフリカのヴィクトリア湖はかつては多様な種が生息する豊かな生態系だったのが、ナイル・パーチというスズキ目の大型魚が持ち込まれたことによって破壊されたという内容だと聞いていた。日本でも、ブルー・ギル、バス等により、在来種が駆逐されたという話がある。一種類の魚によって、大きな湖の生態系が壊滅的な状況に追い込まれるというのがどんなものなのかという自然科学的な興味が先にあった。

冒頭から現れるナイル・パーチの圧倒的な大きさに驚く。まさに化け物。が、この映画は自然科学的な関心の対象としてではなく、むしろこのナイル・パーチを輸出する漁業と派生する経済や貧困の問題、民族闘争、ヨーロッパの軍事産業などを描いたもの。環境破壊が引き起こす社会の荒廃をドキュメンタリーで撮っている。映像は、なかなかに信じがたい光景ばかり。思わず目を背けたくなった。