文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)

下巻では、1)存続に成功した社会の例および成功の要因、2)近代においては企業の行動による環境保全とそれを引き起こすための消費者行動、そして3(いまやグローバル化によりひとつの国や地域の存続が世界に与える影響が大きく、世界存続のために正しい意思決定により解決する必要がある、という内容。

感想は、過去の文明崩壊に関する深い調査や洞察と、将来に向けた意思決定の深刻さは、個別にはよくわかる。そのどちらも否定するものではないが、過去に学び、現在に生かす、という論旨は説得力が弱い。誤解のないようくりかえすと、弱いのは論理であって、主張には賛成である。その2つを結びつける必然性がどこにあるのか不明だし、無理にそうすることによって正論が論駁される危険があるのではないか。反対派に付け入る隙をみすみす与えているのではないか、と危惧する。2つを結びつけるところに飛躍が感じられる。傍証もここに関しては弱い。

銃・病原菌・鉄と、文明崩壊と、ジャレド・ダイアモンド氏の著作を読んだが、着眼、洞察、主張は面白いし有益だと思う。だが、文章の構成、本としての面白さ、理屈を裏付ける証拠やデータの出し方が駄目。また、文明崩壊(下)は一番駄目で、それは前述したように一部(といってももっとも大事なところなのだが)論旨に飛躍があるところ。ここの部分は贔屓目に見ても無理がある。このような特徴は、いわゆる専門○鹿?エディターはいなかったのだろうか?もっと有能なやつにするべきだったと思う。

否定的なことを書いたが、敬遠せずに、多くの人に読んでもらいたい本だと思う。批判するほどに厳しい目を、環境について向けてほしいと思って、あえて厳しい評論となった、のかもしれない。