銃・病原菌・鉄〈下巻〉

銃・病原菌・鉄〈下巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎
ジャレド ダイアモンド Jared Diamond 倉骨 彰
草思社
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そして下巻。こちらはぜんぜん面白くない。

上巻は地理的、環境的な視点なので、書かれていることはなんとなくにしろ想像がつく。たとえば、世界地図や地球儀を見たことがあれば、大陸の形状はわかるわけだし、そこに育つ家畜、農作物、鉱物等についても、中学・高校の地理、歴史を学んでいれば、思い出しながら読み進めていくことができた。

しかしながら、下巻は言語的、考古学的な論証から、文明の伝播について述べ、わずかな条件の差が、支配する側とされる側を決定的に分けうる可能性について述べているようだ。「ようだ」というのは、わからなくて、面白くなくて、読むのをやめたから。

わずかな条件の差しかない民族たちが散在し、闘争が行われた地球の縮図として、ミクロネシアからマダガスカルまでの、南の小さな島々をとりあげているのだが、この地域の言語的な多様性というのは、英語学習がライフワークになるようなこの国にいたのでは想像できないほどらしい。だが、存在も知らない言語のことを事細かに説明されても退屈なだけ。もちろん読み手の知識不足にも問題はあるのだが、この本は一般向けだよねぇ?

考古学的な論証についても意義があって、「そんなの可能性の問題以上になっていないじゃない?」というのが感想。そうかもしれないけど、そうでないかもしれない。そうであるというなら、証拠がちょっと弱い。こちらは読み手の問題じゃないと思う。それしきのデータでは読者を納得させるのは難しいでしょ、というレベル。

上巻がいくらよくても、下巻がこれでは、ピューリッツァー賞あげてもいいのだろうか。ジャーナリズムの賞だから、学術的価値に問題があってもいいのかな。ちょっと納得できないが。

もうちょっと専門用語を減らして、具体的な事実を脇においても読みこなせるようにしてほしいと思った。