人は見た目が9割

人は見た目が9割
人は見た目が9割
posted with amazlet on 06.03.04
竹内 一郎
新潮社 (2005/10)

さいふうめい」こと竹内一郎氏による、非言語コミュニケーションの重要性を訴える一冊。言語が担う情報伝達の割合はせいぜい7%に対し、それ以外の外見、所作、表情、服装などがコミュニケーションに与える影響は9割を超える。正論でも理屈だけが勝った人の主張には反感を覚えた経験はないだろうか。

タイトルには「見た目」とあるので、タイトルだけを読んで、顧客に信頼されるようなスタイル、表情などを細かに解説したビジネス書を期待したとしたら、そういう本ではない。前書きにもあるように、言語以外によるコミュニケーションを広く捉えて論じており、それには、色、間のとり方なども含む。特に、著者のフィールドであるマンガや演劇における非言語情報伝達の技法に関する考察は鋭く説得力がある。

もっとも印象深かったのは、マナーに関すること。エレベーターや車に乗る順序、客を案内するときのドアの開け方などが、こと細かに動作を規定 していると思えるが、相手を重んじた場合の所作を突き詰めていけばマナー に到達する。つまり無意味な規定ではないのだ。マナーを本質的なことだと考えない人でも、マナーのよい人に好印象を覚えたことがあるのではないだろうか。コミュニケーションを保ち、さらにいえば信頼関係を構築するためには、話す内容ばかり気にしていてはうまくいかなくて、話しかけるタイミング、所作、表情などの内容と関係ないところで勝負が決まる。

逆説的に、話す内容や論理性を大切だと考える人こそ、非言語の部分で損をしてはなるまい。

さいふうめい氏にはお目にかかったことがあるのだが、外見にインパクトのある人ではないが、話す際の視線であるとか、こちらの話を聞く様子などが印象に残っている。話し慣れ、聞き慣れした様子とも違い、かといって切れるほど鋭い質問やコメントを繰り出してくるわけでもないのだが、話しやすいようでいい加減なことがいえないという微妙な緊張感があり、ああいう雰囲気でのインタビューならば面白いコメントが取れるのではないかと思う。