できる社員は「やり過ごす」

できる社員は「やり過ごす」
高橋 伸夫
日本経済新聞社 (2002/07)
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せこい処世訓を語るありきたりのビジネス書を想像するなかれ。企業とは何なのか、従業員は何に満足を見出すのか、終身雇用、年功序列とはどんなシステムだったのかといった命題に深い論考を与える一冊。前半は日本企業に見られる尻拭い、やり過ごしなどの現象の意義や効果などを明らかにしてみせる。後半ではここを基点に未来傾斜なる仮設を立て、経営に求められるもの、経営者のあり方について主張する。さらに終身雇用や年功序列とはなんだったのかを論ずる。最後の賃金体系と働く意欲や企業の成長に関する内容は興味深いが、このテーマは文庫1冊には重過ぎる。著者による別の本にも興味が沸く。

日本企業の意思決定原理

おそらく著者にとっても冒険だっただろう本書である。あとがきにもあるように、学者として、他の学者や学会の反応は怖かったことだろう。本書と同じテーマを扱った学術誌もあるとのこと。2つを比べてみれば、著者の心配と同時に、経営学の病巣も垣間見れるのではないか?

未来傾斜原理―協調的な経営行動の進化

ビジネス書や経営学は景気の波に影響されがち、というのは控えめすぎで、手のひらを返したように数年前と180度逆転した論考が発表される節操のない領域だと思っていたし、読み終えた今もその考えは変わらない。ダ○ヤモンド社の出版物や雑誌のタイトルを見てみれば、たいていの人には同意していただけると思う。つまり、調子のいい企業のことばかり書き立てて、我もと思う金の亡者を食い物にしているのだ。本質的なところではほとんど前進していない。その結果、企業は同じ過ちを繰り返す。が、こういうまじめな学者もいるのである。