ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則

ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則、ジェームズ・C・コリンズ (著), ジェリー・I・ポラス (著), 日経BP出版センター

「ビジョナリー」と聞くと、主張がぶれないとか、カリスマ的だとか、そういうイメージを思い浮かべる。だが、この本によれば、長い歴史を持ち存続し続ける、きわめてわずかしか存在しない優良企業が、優良たる所以を分析すれば、少なくともカリスマ性が必須条件ではないし、経営手法等に関しての「神話」のいくつかはビジョナリーであることとは無関係か、むしろマイナスな要因であるという主張は斬新。

企業の比較、分析方法は、ビジョナリーカンパニーとそれ以外の優良企業の特徴分析によるが、この方法は計算機科学の一分野である機械学習の手法と類似している。すなわち、古典的な機械学習の手法では、適切な量の正例、負例を収集し、それらをわけ隔てる意味での属性の重要度を学習する。この数学的に確かな手法と類似の分析による結論は、経営に関して述べられる通説を否定するのに十分な根拠となって、主張が正しいであろうことを支持している。

一方、この本のコントリビューションはこのあたりまで。残りは過去50年以上にわたる、膨大な資料の紹介となっている。分析の根拠を事実で裏付ける必要は確かにあるが、読む側としては相当退屈な内容。