「アタマにくる一言へのとっさの対応術」

アタマにくる一言へのとっさの対応術バルバラ・ベルクハン、草思社

本の帯には、

  「言われっぱなしはゴメンだ」というあなたのための決定版・切り返し術!

とあるが、この本はそういう攻撃のための本ではない。むしろ、日常的にダークな一言と向き合わねばならないストレス社会から、いかに自分を守るかを、具体的な処方箋を示し、教えてくれる防御の本である。処方箋は、心を平常に保っている状態をイメージすることで、相手との距離を適切に保つことを助ける。私自身、顧客との打ち合わせ前にはこの処方箋を思い出すことによって、心理的なストレスから解放され、内容のあるディスカッションに専念できるようになった。このイメージのような主観的であいまいなものを、論理と感情の両方に訴えて読者に納得させる絶妙な文章は、さすがに心理学者。翻訳もうまいのだと思う。

文化の違いからか、具体的な行動例には、そのまま日本で使うには無理があるものもいくつか記載されている。しかし、無理をせず、できることから試してみて、うまく感情を処理できたという成功体験を重ね、自信を積み重ねていく上で、そのようなことは小さな問題でしかない。