努力しない生き方

努力しない生き方 (集英社新書)
桜井 章一
集英社
売り上げランキング: 19980

足し算的な社会から、引き算的なや生き方へ。ただ押してだめだからひいてみろという意味ではない。足し算的な思考から、足すための力を抜くことが「引き算」の意味。決して、後ろ向きに生きろということではない。このあたりが微妙なとこだが、まったく違う価値観となる・足し算をするときには同時に引き算をやったほうがよい(=力を抜く)ということ。

社会が勝ち負けで量られる時代になってから久しいが、すでに勝ち負けは家庭、子育て、生き方にまで染み付いてしまった。これはかなり怖いこと。自分でも勝ち負けの価値観が染み付いているという実感というか、この本を読んで反省する点は多い。昔(学生時代まで)は、勝ち負けなどまったく気にしない生き方をしていた。その頃は勝ちばかりだったような気がする。

勝ち負けが基準になりだすと、負けが混むようになる。勝ちを意識しないところで戦ってこそ勝てるのだ。この本は、そういう生き方をしていた時代の自分を思い出させてくれたと思う。逆に、今はかなり世の中に毒されていると思う。

以下は、その頃の自分が大切にしていた生き方で、今できていないと思うもの。

・努力しない(力が入ったら疑え)。努力よりも工夫。努力はうそっぽい。

・持つほど不自由になる。持っているから自然体で動けない。

・覚えない(=知識は足すよりひいてみる)

・正さない(=部分だけ正すと元に戻る)

・意味を求めない(=意味のないところに可能性がある)

・わからない(=わからないことをわからないままにする)

・見ない(=聞くことで相手が見えてくる)

・運を求めない(=運を意識する人に運は来ない)

・頑張らない(=頑張ると柔らかさを失う)

以下は、昔は意識していなかったが、今後気にするべきと思うもの。今はやっちゃっているもの。

・恨まない(=だめなものはすっぱりあきらめる)

・苦しまない(=期待しない)。「たいしたことない」、「知ったこっちゃない」と考える。

・隠さない(=賢く見せるのは賢くない)

・「勝つことを求めず、負けない気持ちでやれ」

・才能を磨かない

・相手を読まない(=分析したらそこで終わりになる)

・プライドを持たない

・急がない

・求めない(=求めると願いはかなわない)

・目標を目の前に置かない(=目標は横に置くとよい)

・我慢しない(=我慢すれば報われるは錯覚である)

・つくらない(=作るとうそが入る)。それよりも、生む。

・裏のない人間にならない(=表だけで生きるとおかしくなる)

・よいことをしない(=よいことに囚われると悪を生む)

・貫かない

・計算しない

・エネルギーを抑えない(=出せば出すほど沸いてくる)

・立ち止まらない(=「休む」も「動き」のひとつ)

・集中しない(=集中は丸く広げていく)

それ以外にもあるが、それらは今の自分には直接思うところがないか、あるいはやれてるもの。そういうのはすごく少ない…

死ねばいいのに

死ねばいいのに
死ねばいいのに
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京極 夏彦
講談社
売り上げランキング: 1235

2011年の一冊目が「死ねばいいのに」というタイトルというのも。京極の小説に、現代の話はなかったわけではないが少数派。理解すること、されることを拒絶した一連のエピソードは、一気読みしかない。

西巷説百物語

京極風仕掛人シリーズの上方編。又一とはまた違った個性の仕掛だが、登場人物が多くて誰が誰やらわからない。お龍のポジションに、お銀がいなかったか?少々キャラクターのたち方が弱い。平均的には楽しめる。

2010年のまとめ

2010年の読書を総括。「貫かない」を実践する意味でも、これまでやろうと思ったがやらなかった、総括をやってみる。

読んだ本の数:28冊

4半期ごとの集計:

 1Q 4冊

 2Q 3冊

 3Q 7冊

 4Q 13冊

ほぼ半数を4Qに読んだことになる。前半に読んだのは28冊中たったの7冊。これは明らかに仕事上の立場の変化が原因で、読書の時間がなかったからに違いない。

カテゴリ別:

 ビジネス書        9冊

 読書           12冊

 自然科学書       1冊

 マネー           1冊

 パソコン・インターネット 1冊

 政治・経済・国際     1冊

 その他           2冊

ビジネス書と読書は細分化すべきかも知れない。

著者別:

 京極夏彦   2冊

 万城目学   2冊

 桜井章一   2冊

万城目学は、最近あまり読まないタイプの小説でとても楽しんだけれども、振り返ったときに、さほど自分自身の読書の幅に広がりを与えなかったように思う。京極夏彦は鉄板。桜井章一は昨年後半に発掘したもので、今年も続けてあたってみたい。

お勧めランキング(小説編):

1位 バーナード ベケット,創世の島

2位 千早茜,魚神

3位 オラフ ステープルドン,最後にして最初の人類

選ぶ観点は、自分の読書の幅が広がったかどうかと、振り返ってストーリーを思い出せるかどうか。3位なんかは面白いかというと面白くなかった気もするが、前述の観点だとかなり上位。1,2位はそれ以上によかった。

お勧めランキング(小説以外):

1位 ジェームズ・スロウィッキー,「みんなの意見」は案外正しい

2位 ナシーム・ニコラス・タレブブラック・スワン―不確実性とリスクの本質

3位 マルコム・グラッドウェル,ケチャップの謎 世界を変えた“ちょっとした発想”

4位 桜井章一,努力しない生き方

5位 桜井章一,人を見抜く技術

6位 平野 敦士 カール アンドレイ・ハギウ,プラットフォーム戦略

7位 金哲彦,からだが変わる体幹ウォーキング

1位は掛け値なしにためになった。これは図書館で借りたが、手元におきたい。2,3位は関連。予測できなくても勝つことができるというのは、(昔の)自分の哲学にばっちり合う。4,5位は、その哲学を思い起こさせてくれた著者によるもので、今年も読みたい。但し、おぼれない様にしたい。6位は、今年の立場の変化がなければ読もうと思わなかったかもしれない。内容的にはかなり気に入らない内容とはいえ、流行の抽象的キーワードの側面だけでなく、その落とし穴について分析しているところはよかった。7位は、日常的に使えるという意味で一番役に立った。身体的な話題を文章で伝えることに成功しているという意味でも、なかなかない本。4,5位も、かなり身体的なところを重視したものである。

2011年は、以上を踏まえていくつかテーマがある。

a/ 桜井章一

b/ 身体性

c/ これからの社会

d/ 音楽理論

a, bについては、2010年に発掘できたトピックとしてよいだろう。cは、「安全安心な社会を求めないこと」、「分析しないこと」というのが、自分自身の仕事に対するアンチテーゼとなる意味で、いろいろ見極めていきたいところ。dは、今はじめたばかり。1年後に何か語れるようになっていきたいテーマ、ということで挙げた。

人を見抜く技術──20年間無敗、伝説の雀鬼の「人間観察力」

人生や仕事に悩む、あるいは悩んでいるからこういう本を読みたくなるが、その中でこの本を選んだ理由や、この本から掴みたいことというのが、著者が一般的な社会人とはかなり違った人生を過ごし、場合に寄ったら修羅場を多数を切り抜けてきたのだろうと思っているからに違いない。

この本の内容自体は、全体を通してみれば、病んだ社会のいろいろな側面(無差別殺人、モンスターペアレント、キレる若者・サラリーマン)を含んでいて、いまいち尖った部分がないともいえる。そういう中で、自分にとって一番刺さった内容は、「癖」ということ。自分にも、他人にもある癖を手がかりに、相手を観察し、対処するということ。癖に注目することで、いろいろなことが変えられるという点だったと思う。

自分のマイナス面を性格だといってしまえばそれまでだが、癖だと考えることで注目し、すこしずつ変えていけるかもしれないこと。他人の思考を直接読めなくても、癖に現れる部分が多いので、そこから推し量ること。そういう観察をすることで、しがらみから距離をおいたり、人を育てたりということがやれる。こういう観察眼は、おそらく思考能力ではなくて身体能力だから、著者は「目力」、「全体眼」、「柔らかさ」という点を強調しているのだろうと思う(第二章)。

これらの身体能力がないと、他人や危険に向き合うことがそもそも無理なんだろうと思う。ただ、この身体能力は、人間に対しては有効だが、狂人に対しては無効である。狂人に対してできることは、それを狂人と認識するところまでのようである。

「みんなの意見」は案外正しい

「みんなの意見」は案外正しい
ジェームズ・スロウィッキー 小高 尚子
角川書店
売り上げランキング: 21134

問題解決や意思決定において、優れた個人と、必ずしも優れたメンバばかりではない集団を比較したとき、集団のほうがより賢く、あるいは正しく判断する能力を持つことや、集団のほうが得意な問題のタイプや、集団がうまく機能するための条件まで、詳細に研究した本であり、いろいろな示唆に富んでいる。

集団が得意な問題は、認知(一章)、調整(五章)、協調(六章)であり、集団がうまく機能するための条件とは、多様性(二章)、独立性(三章)、分散性(四章)である。七章以降は、科学、企業、市場や民主主義などのなかで、集団が以下にして機能するか、あるいはしないかの各論である。

扱う事例は、Googleの民主的なランキングアルゴリズムソーシャルネットワークなどの、集合知がもてはやされるきっかけになったような最近のことよりも、動物や昆虫の行動、社会科学の実験、金融市場におけるバブル崩壊、企業や諜報機関が取り入れようとしている予測市場の考え方など、非常に多岐にわたる。

おとなの叱り方 (PHP新書)

おとなの叱り方 (PHP新書)
和田 アキ子
PHP研究所
売り上げランキング: 237796

アッコさん流の叱り方には、本人に相当な覚悟がいる。覚悟が必要だと思うのは、「相手」をどの範囲に広げるかという問題のことである。大人がまず責任を持って叱るべきなのは、自分、それから配偶者、自分の子供。ここすらできない人が増えたという嘆きは尤も。次に後輩、部下だろうか。この辺までは、相応の立場にある人ならば、叱ることは自分の義務や責任の一部の場合もある。

叱る相手を、この先に広げることは、こんな時代に容易ではない。この辺から相当に覚悟がいる。近所づきあい、ビジネス上のつきあい、親戚づきあい、さらに他人。路上タバコを必ず注意するというアッコさんだが、これはかなり上級クラス。

正直言うと、自分の子供より先は、私は、アッコさんの意味では叱れないと思う。なぜなら、「どうでもいい相手は叱らない」というところに、叱る、叱らないの境界があるのなら、「こいつふざけたことを言ってるな」と思った段階で、かなりその相手はどうでもいい相手になってしまうからだ。ふざけたことを言っても「相手の成長を信じられる」のは、やはり子供までだろう。そういう意味では、よその子でも子供なら叱れる。大人は叱っても、子供に比べれば格段に成長や変化を期待できないと思っているのだ。

ただ、自分を振り返ればそうでもないのかもしれない。人に厳しすぎるのかもしれない。